PreciouS-突然聞かされた真実。-あれから私はあなたに施設の近くまで送ってもらった。 …あなたにはまだ私が施設暮らしだってこと言ってない。 あなたが好きっていってくれたことすごく嬉しかった。 でも、私にはそんな勇気はなかった。 なんだか、胸の奥がモヤモヤする。 玄関を開けると、施設の人たちが奥の部屋から出てきた。 「あのね…ちょっとね、話があるの。来てくれる?」 私はちょっと戸惑いながらも後をついていった。 「ここに座ってくれる?」 「…はい。」 私は他の子がいないへやに連れていかれた。 変な沈黙が続く。 私、何かしたっけ?夜中出歩き過ぎとか…笑 …そんなんじゃない。もっと違う気がする。 なんなの?早く言ってよ。 「あのね、ちゃんと聞いてね…」 突然言われた。理解できなかった。 『あなたのお母さんが会いたがってるわ。』 今更何いってんの?私に会いたい? 私を見捨てて自分だけ逃げた女が?笑わせないでよ。 私はあいつの所為で… こんなにも私を追い詰めといて奇麗事いわないでよ。 「…!」 「待って!!!」 私は施設を飛び出した。 無我夢中で走った。行くあて?そんなのない。 とにかく抜け出したかった。あの状況から。 あの場にいたら息苦しくて倒れちゃいそうだったから。 街を一人でさまよう。 イチャつくカップル。言い争ってる若者。援交してる女子高生。 視界の隅にチラチラ入る。 いつも見る風景。変わらない日常。 今、自分は透明人間なんじゃないかって思える。 ううん、そうでありたいんだ。 時計を見ると11時半。 私は近くのカラオケに入った。 歌いたかったわけじゃない。 一人になれる場所がほしかった。 あれからどれくらい経ったんだろう。1日がすごく長くて 私の中じゃ1週間くらい経ってる気分だった。 気づくとあたりはオレンジ色に染まってて、やっと1日が終わるんだって思った。 あなたといる時は時間なんてすぐ過ぎるのに。 …今何してんだろ? 気づくと携帯を手にしている自分がいた。 慌てて携帯をポケットに押し込む。 何やってるんだろ、私。 あなたのことは好き。でも…まだ怖い。 いつの間にかあたりは暗くなっていた。 今日どーしよー;お金あんま持ってないし。 このまま野宿なのかな; とぼとぼとあてもないまま歩き始めた。 「…雨だ…。」 雨が私のほほにおちる。ポツポツって何度も。 私の乾ききった涙の代わりに空が泣いてくれてるんだって思った。 私もこのまま一緒に流れることができたら… 消えることができたら… その瞬間頭の中にあなたの顔が浮かんだ。笑顔の仁が。 私の中でここまであなたの存在が大きくなっているなんて思わなかった。 あなたに会いたい。 「おい!!」 聞きなれた声でも今一番聞きたかった声がした。 「お前、何やってんだよ!?」 あなたが私にかけよってきた。 びっくりして声が出ない。 会いたかった人が傍にいる… 「え…?何でいるの?」 「何でって、ここ俺んち。」 見上げると隣には大きなマンションがあった。 「このままじゃ風邪ひくぞ!」 「……」 「…;とにかく、うち来い!」 そういってあなたは私の手を引っ張って歩き出した。 あなたの背中がいつもより大きく見えた。 私はあなたの手を少し強く握り返した。 |